2025.11.13
  • 開発現場から

「ERPの使いづらさ」を超える新常識。intra-mart で描く “フロント改革” のリアル

「ERPの使いづらさ」を超える新常識──intra-martで描く“フロント改革”のリアル|富士ソフトアメリカ

FUJISOFT ONLINE SEMINAR Vol.1 開催レポート

 「入力が煩雑」「二重登録が多い」「経営数値がすぐ見えない」

ERP(企業の基幹業務を統合管理するシステム)は企業の “中枢” である一方、現場にとってはしばしば “使いづらい存在” でもあります。そんな構造的な課題を打破するカギが「ERPフロント」という新しい考え方です。

2025年11月10日(太平洋時間)に開催された『FUJISOFT ONLINE SEMINAR Vol.1』ではNTTデータ イントラマートFUJISOFTグループがタッグを組み、ERPの価値を最大化する現実的なアプローチを解説しました。テーマは「intra-mart®で実現するERPフロント活用」

チャットには質問が途切れず、参加者のリアクションも活発。終始、熱気に包まれたウェビナーとなりました。

ERPフロントとは?──“現場と中枢をつなぐ層”

NTTデータ イントラマート 堀雅博氏
8グローバルビジネス本部 グローバルビジネス推進グループ グループリーダー2001年NTTデータイントラマート入社、セールス&マーケティング本部に所属。2012年グローバルビジネス本部設立後、海外ビジネスの立ち上げを兼務。2019年からタイ・バンコク、香港の海外駐在を経て、現在本社にて 日系グローバル顧客の海外拠点をサポートするミッションに従事している。

登壇したNTTデータ イントラマートの堀雅博氏はこう語ります。

「ERPの中身を改修するのではなく、“外側”に柔軟な仕組みを作る。これがERPフロントの発想です」

ERPフロントとは、ERPと現場の業務を橋渡しする「インターフェース層(システム間の情報や操作をつなぐ仕組み)」のこと。 ERP本体(バックエンド)は標準機能を保ち、現場に合わせた業務プロセスやUIは “外側” で柔軟に構築します。

「ERP本体をいじるほど、将来の保守コストやバージョンアップの負担が跳ね上がります。だからこそ、差別化はフロント側で行うのが合理的なんです」

「三層構造」からなるintra-martのアーキテクチャ

堀氏は intra-mart のアーキテクチャを「三層構造」で解説しました。

ty-about-08(画像引用:intra-martとは

1. 開発レイヤー(共通基盤)

多言語対応・マスタ管理・共通部品群を備え、ローコード開発による高い生産性を実現。

2. プロセス・オートメーションレイヤー(BPM/ワークフロー)

業務フローを可視化し、ボトルネックを特定。承認・通知の自動化を可能にします。

3. アプリケーションレイヤー

文書管理・会計・SFAなどの業務アプリを統合。部品を組み合わせて業務に合わせたアプリを短期間で開発できます。

intra-mart が支える「共通基盤×自動化×ローコード」

堀氏は intra-mart が “企業全体の共通基盤” として「IT統制」「業務改善」「開発生産性」の3点を同時に実現すると説明しました。

日本・アジア・欧州で進むintra-mart の導入事例

三井不動産株式会社 様

ERPコア+周辺の稟議・会計を全社展開し働き方改革を推進

東京海上インドネシア保険株式会社 様

縦割りの保険業務をintra-martで一連のプロセスとして統合、効率化とガバナンスを両立

TOPPANエッジ株式会社 様

ワークフロー/BPMで調整の多い業務を可視化し、業務効率を約3割向上

野村證券株式会社

購買プロセスをアジャイルで内製加速

SOMPOホールディングス様

Notesからのリプレースを機にローコード基盤として採用、業務負担を大幅削減

東北電力株式会社 様

Web申込等をローコードで迅速構築し、顧客利便性と処理時間を改善

「グローバル標準の基盤を使って、現場に合わせたスピードで作ることが重要」と堀氏。特に海外拠点では人材不足・紙文化・二重入力など共通課題に対して「プロセスを可視化し、自動化と標準化を同時に進める」ことが鍵になると指摘しました。

クリーン・コア戦略── “フロントで柔軟に、コアは標準で守る”

富士ソフト株式会社 阿部良平氏
6ソリューション事業本部 営業統括部 ソリューション営業部 第4営業グループ 主任2014年 富士ソフト株式会社入社。お客様付きのアカウント営業として業務系ソリューションを中心とした営業活動を行う。2024年よりintra-martのソリューション営業担当となり、現在はNTTデータイントラマート社認定のAmbassadorを目指し活動中。

次に登壇したのは富士ソフトの阿部良平氏です。ERPフロントの定義を明確にしながら、「クリーン・コア戦略」の実践的な意義を語りました。

「ERPは法改正対応やバージョンアップが続きます。 コアを過度に改修すると、将来の検証・移行コストが膨れ上がる。だから、独自性はフロント側に実装して、ERP本体は標準のままに保つことが大事なんです」

ERPフロントは現場業務とERPの間に設けられる「柔軟なインターフェース層」。 この層を活かすことでERPのブラックボックス化を防ぎ、業務変化への対応を加速します。

国内実践例:食品卸の“紙・メール依存”を脱却

阿部氏が紹介した国内事例が象徴的でした。売上1兆円を超える食品卸企業では受発注業務がFAX・メール・手入力に依存し、データ集約や在庫管理が非効率でした。

intra-martを導入し、顧客・仕入先・社内が同じプラットフォーム上で操作できる受発注システムを構築。会計データはERP「Dynamics 365」と自動連携し、リアルタイムで経営状況を把握できるようになりました。

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「FAX・メールは請求書のやり取りのみ。それ以外の一連の業務が一つのシステム上で完結し、業務負荷は約20%削減できました」

現場の入力負担が減っただけでなく、経営判断のスピードも飛躍的に向上しました。

海外事例に見る「エンドtoエンド」の効果

堀氏は海外の実践例を紹介。ERPを中心にすべての業務をつなぐ “エンドtoエンド” の改革が進んでいます。

中国の自動車部品メーカー

購買業務をOCR+RPA+BPMで自動化。公的請求番号を自動照合し、不正防止と監査対応を両立。

香港の保険会社

保険金請求~支払いを完全デジタル化。ダッシュボードで進捗を可視化し、ガバナンス強化とリードタイム短縮を実現。

「AIやRPAを点で入れるだけでは限界があります。業務プロセス全体を見直して“つながる仕組み”にすることがDXの本質です」(堀)

熱気に包まれた質疑応答

後半の質疑応答では、チャット欄に質問が相次ぎました。

  • 「ERPを改修せずに、どこまでフロントで実現できるのか?」
  • 「海外拠点を含めた導入時のポイントは?」
  • 「どのプロセスから着手するのが効果的か?」

登壇者の答えは一貫していました。

「まずBPMで現状を可視化し、To-Be(理想像)を描く。そして、効果が高い領域から小さく試して成功体験を積み上げることが重要です」
(BPM:Business Process Management/ビジネスプロセスマネジメント)

教育や説明工数を減らすためのUI設計についても言及があり、「スマートフォン前提の画面設計で、現地社員でもすぐ操作できるようにする」など、海外拠点を見据えた現実的な工夫が紹介されました。

ERPを“守りながら進化させる”という選択

今回のセミナーを通じて浮かび上がったのは、「壊すDXではなく、磨くDX」という考え方です。ERPを活かしながら、外側(フロント層)で柔軟に業務を変えていく。これこそが、スピードと現場力を両立する最短ルート。

堀氏の言葉が印象的でした。

「ERPを使いこなす時代から、ERPを“生かす”時代へ」

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登壇者

 

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中島恒久
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COO
中島 恒久
2004年に永住権に当選しアメリカへ移住。日本時代のインターネットプロバイダーでのサポート業務経験を活かしシステム開発会社を起業。その後、表情心理学系スタートアップの立ち上げへ参加。食品卸企業にてオペレーション部門、倉庫・物流部門の責任者を務めた後、2015年にFUJISOFT America 設立に参加。2017年より現職COO。MBA、ITIL4 Foundation、ECBAを取得。法人営業、管理会計、ビジネスアナリシス、プロセス改善を得意領域としている。

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