2025.09.23
  • 経営とIT

日米のシステム開発における文化の違い

日米のシステム開発における文化の違い

「日本ではシステムを外部委託し、アメリカでは自社で開発する」は本当?

「日本ではシステムを外部委託し、アメリカでは自社で開発する。だからアメリカではSIer(システムベンダー)は成立しない」――こんな解説を耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか?

確かにそうした傾向があるのは事実ですが、実態を単純化して語るのは危険です。企業の業種や規模、経営状況によって、システム開発や導入の最適な形は大きく異なるからです。

アメリカは日本に比べて雇用の流動性が高く、プロジェクト単位でシステムエンジニアを採用することも可能です(もっとも州ごとに労働者の権利や法的保護は大きく異なるため、一概には言えません)。大企業であれば、開発チームを内製化するケースも少なくありません。しかし、中小規模の企業では優秀なIT人材の人件費が大きな負担となるため、自社に専属の開発チームを抱えるのは容易ではありません。

では、アメリカに展開する日系企業の状況はどうでしょうか。JETROの「2023年度 在米日系企業調査」では、経営上の大きな課題として約7割の企業が「人材不足(IT人材を含む)」を挙げていますJETRO 2023調査)。つまり、アメリカでビジネスを展開している企業であっても、すべてがIT人材を十分に採用し、システムを内製できるわけではないのです。

「企業ごとに最適解を探している」のが実態

実際のところ、アメリカにもシステムベンダーは数多く存在し、必ずしも「内製一辺倒」というわけではありません。ただし、日本で一般的な「ゼネコン型」――要件定義(システムに必要な機能や条件を整理する工程)から保守運用までを包括的に担う大規模ベンダー――は比較的少なく、特定領域に強みを持つ専門企業が多い点が特徴です。そのため、ユーザー企業は複数のベンダーを組み合わせてプロジェクトを進めるケースが目立ちます。

さらに、開発スタイルの変化も進んでいます。日本ではかつて、ゼロからシステムを作り上げる「スクラッチ開発」が主流でしたが、近年ではパッケージ製品やクラウドサービスを導入し、自社業務に合わせて調整する方式が増えています。アメリカでは以前からこの方式が一般的であり、基幹業務向けのパッケージソフトを導入し、必要な範囲のみカスタマイズするのが標準的です。場合によっては、システムの入れ替えを機に従業員体制が大きく入れ替わることもあると言われています。

日米のシステム開発においては、お国柄の違いが強調されがちですが、実態としては「企業ごとに最適解を探す」という点で共通している、と言って良いのではないでしょうか。

とはいえ、日米で注力する領域の違いは存在する

ただし、両国の開発スタイルに「何を重視するか」という違いがあるのも事実です。

日本企業は「工程の正確な管理」「品質保証」「納期・コストの遵守」に注力する傾向が強く、現在でもウォーターフォール型(工程を順序立てて進める開発手法)がよく採用されます。

Visual Paradigm の比較研究でも、要件が安定しており変更が少ないプロジェクトではウォーターフォール型が予算・納期の管理に有効だと報告されています(Visual Paradigm, 2023

一方でアメリカ企業は「ゴールの設定と達成」「変化への迅速な対応」を重視し、アジャイル的な発想――まず動くものを作り、改善を繰り返す――が好まれる傾向にあります。アルベルト・ペレス・ヴェイガの研究(2017年)でも、アジャイルへ移行した企業では顧客満足度や変化対応力が高まったとされています(Perez Veiga, 2017

結論:文化の違いより「状況に応じた判断」

結局のところ、日本は工程管理に注力して進化を遂げ、アメリカはビジネス上の成果達成を重視してきたという傾向があると言えます。その結果、注力する工程や選ばれる手法に差が出てきたのでしょう。

しかし、成否を分けるのは文化そのものではなく、自社のビジネス目的・リソース・市場環境に即した判断ができるかどうかにかかっていると言えます。

当社は、日本的な「品質と工程管理の強み」と、アメリカ的な「スピードと柔軟性」を理解し、両者の良い部分を取り入れた開発支援を行っています。日米双方の文化と国際標準の知識体系を踏まえつつ、企業ごとに最適な解決策を共に探すことこそが、私たちの強みです。

「ビジネス目標から始めるシステム改善」にお悩みの企業様はぜひご相談ください。

 



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中島 恒久
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COO
中島 恒久
2004年に永住権に当選しアメリカへ移住。日本時代のインターネットプロバイダーでのサポート業務経験を活かしシステム開発会社を起業。その後、表情心理学系スタートアップの立ち上げへ参加。食品卸企業にてオペレーション部門、倉庫・物流部門の責任者を務めた後、2015年にFUJISOFT AMERICA設立に参加。2017年より現職COO。MBA、ITIL4 Foundation、ECBAを取得。法人営業、管理会計、ビジネスアナリシス、プロセス改善を得意領域としている。
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