2025.11.11
  • 開発現場から

AIが変える仕事のカタチ|中島 × 早乙女 対談

AIが変える仕事のカタチ|中島 × 早乙女 対談

在米日系企業を中心に、業務の効率化と人材不足の課題解決を支援してきた富士ソフトアメリカ。 いま、その現場で生成AIが急速に存在感を高めています。
本対談では中島COOが聞き手となり、AI活用を先導する早乙女が「現場のリアル」と「AI導入の可能性」を語りました。
テーマは「AIはどこまで実務を変えられるのか」「ベンダーはどう進化すべきか」。

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中島 恒久
COO
2004年に永住権に当選しアメリカへ移住。日本時代のインターネットプロバイダーでのサポート業務経験を活かしシステム開発会社を起業。その後、表情心理学系スタートアップの立ち上げへ参加。食品卸企業にてオペレーション部門、倉庫・物流部門の責任者を務めた後、2015年にFUJISOFT America 設立に参加。2017年より現職COO。MBA、ITIL4 Foundation、ECBAを取得。法人営業、管理会計、ビジネスアナリシス、プロセス改善を得意領域としている。
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早乙女 拓栄
Solution Engineer and Project Manager
大学院にて画像認識を研究。2000年に富士ソフトに入社。携帯向けソフトウェアの開発および評価業務に従事後、インド、タイ、中国において同社のグローバルビジネス展開に尽力。2012年にはソウル支店の設立に尽力、2015年より富士ソフトアメリカに赴任。アメリカにてシステム開発ビジネスを立ち上げ、エンジニアリングチーム率いる。

在米日系企業が直面する「人材難」

中島  当社は在米の日系企業を主なターゲットにしています。2023年のジェトロの調査によると、在米日系企業の課題として最も多かったのが「人材が獲得できない」ことでした。特に、行動力と高スキルを持った人材、IT人材の確保が難しいという声が多いです。実際、我々の体感でも同じです。スキルを持つ人材は待遇面でも採用競争が激しく、獲得が難しいですね。
こうした状況を打破する一つの可能性として、生成AIの活用があるのではないかと思っています。

現場で生まれるAI活用ニーズ ― 繰り返し作業とデータ分析

中島 実際にお客様の現場ではどのような業務領域でAI導入の関心が高いですか?

早乙女 多くの企業で「毎月決まった作業を手作業で繰り返している」という状況があります。
たとえば、紙で記録を取り、毎月Excelに入力してファイルをまとめ、所定フォルダに格納して締め処理を行うといったような作業です。また、メールで大量に送られてくるPDFインボイスを手入力で管理表に転記して保存する、というケースもあります。いずれも人間ができるけれど時間がかかる仕事です。こういった作業を「AIでなんとか楽にできないか?」というご相談が多いですね。

中島 なるほど。AIはこうした繰り返し作業やルール化されたタスクの自動化に強いという理解で良いですか?

早乙女 そのとおりです。やり方と手順を明確に教えておけば、AIはそのとおりに実行できます。例えば、「PDFをこのフォーマットで出力してください」と定義しておけば、正確に出力できます。 この領域はAIが非常に得意とする分野と言って良いですね。

AI導入のプロセス ― “優秀な新人を育てる”感覚で

中島 手順をAIに教えるのはどれくらいの工数がかかりますか?

早乙女 初期設定は1〜2時間で作れますが、何度か修正を重ねて完成度を上げるプロセスが必要です。新人教育と似ています。最初に基本を教え、数回の反復で理想の形に近づけるイメージです。
AIは知識のベースを持った「非常に優秀な新人」のような存在です。文化やルールを教えればしっかり育ちます。

中島 なるほど。つまり使いながら調整していく1〜2か月が成長期間というわけですね。

早乙女 そうですね。ホワイトカラーの業務であればAIは十分対応可能です。

経営層が求める「自動分析」と「予測」

中島 現場だけでなく、管理職や経営層からの相談も増えていると聞きます。どのような内容が多いですか?

早乙女 部長や課長クラスでは会議で報告するためのデータ分析の自動化ニーズも大きいです。売上や利益の報告にExcelを使っているお客様はいまだに多いのですが、色々なところからデータを集め、エクセルで加工、整形するのに時間が掛かってしまうのが辛いという声が多いですね。そして、通常業務が立て込んでいると報告自体が滞ってしまうという状況も良く起きています。このような「やればできるが、時間を取られる作業」をAIで自動化したいという声は非常に大きいです。
あと、店舗展開をされている企業では店舗における「異常値の検出」、つまり「どの店舗で問題が起きているか」を本社側で即時に把握したいという要望もありますね。さらに、食品メーカーなどでは生産量出荷量予測の相談が多いです。需要予測に基づいて仕入れやシフトを最適化するというのは多くの企業にとって共通化の課題ではないでしょうか?
ただし、「どう始めればいいか分からない」という段階で止まっている企業が実際には多いです。

AI予測の“ブラックボックス”をどう解くか

中島 従来の機械学習はロジックが明確でしたが、生成AIは “ブラックボックス” な印象があります。今はどうですか?

早乙女 確かに生成AIにそのままデータを入れると、どんなロジックで結果が出たのか分からない問題があります。そこで最近はAIに予測させるのではなく、AIに「予測する仕組み」を作らせるというアプローチを取ります。つまり、AI自身にロジックを生成させ、結果の説明まで出させる。これにより、数値の根拠も言語で説明でき、ブラックボックスではなくなります。

中島 AIに全て任せるのではなく、人間が指示・検証し、イニシアチブを取ることが重要ということですね。

早乙女 はい。人が検証できる形でAIを活用すれば、透明性も担保できます。

AI時代のベンダーの役割 ― 「請負」から「伴走」へ

中島 AIの進化によってユーザーは自立し、システムベンダーはユーザーのAI化の伴走者になっていくだろう、という見立てもありますね。この視点から我々のようなベンダーはAIとどう関わるのが良いと考えますか?

早乙女 現時点ではAIの可能性を理解している企業は多いものの、「どのツールを使うべきか?」「既存システムとどうつなぐか?」までを明確にわかっている企業は多くないと考えています。そこに我々の出番があると思っています。最適なAIツールの選定やシステムとの接続設計をサポートすることで、ユーザーのAI導入のつまずきを防ぐことに貢献できます。
当社では現時点において主要な生成AIツールを有償プランで検証しており、得意・不得意を把握しています。非IT企業ではここまで試すのは難しいため、我々の知見が活かせますし、AIエージェントを社内システムに組み込み、業務に最適化する構築支援も可能だと考えています。

AIエージェントと“個別最適化”の可能性

中島 お客様自身が自社業務を理解しているからこそ、最適なAIエージェント構築は自社主導で行うべきですよね。

早乙女 その通りです。業務の流れやボトルネックを把握しているのは現場です。加えて、ステークホルダーマネジメントまでをAIに組み込むことが出来れば非常に効果的だと考えています。伝える相手ごとに「どの情報をどの粒度で出すか」を変えられれば、レポートの伝わり方が格段に向上します。 たとえば、「経営層には要点中心」「現場には詳細データ中心」といった出し分けが可能です。 これはコミュニケーションコスト削減にもつながりますね。

AIを“右腕”として活用する ― 経営支援の新しい形

中島 AIを経営層の右腕・アドバイザーとして使うのは有効だと思います。業務の課題をAIと壁打ちしながら改善策を検証する、実データを入れて効果を試す、といった使い方です。

早乙女 当社のプロジェクトマネジメントでも同様にAIを使っています。過去の計画書や提案書をAIに読み込ませ、進捗を報告・相談しています。AIは感情を排除して冷静に分析するので、見落としや判断ミスを防げます。さらに、AIに週次アラートを設定し、進捗遅延や異常を自動通知させる仕組みも有効です。

中島 リアルタイムで進捗やアラートが届けば、経営の意思決定は格段に早くなりますね。いわば「経営企画エージェント」のような存在です。

早乙女 そうですね。役割を与えれば、AIは経営者のアドバイザーとしても十分機能すると思います。

まとめ:AIは“自立と共創”の時代を切り開く

生成AIが単なる業務効率化ツールではなく、「人と組織の自立を支える技術」になりつつあります。AIは人の仕事を奪うものではなく、人が考える余白を取り戻す存在となり得ます。そして、人は人にしか出来ないことに価値を発揮していく。これこそが真のDXと言えると思います。

本記事が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。私たちは現地アメリカで「経営者の右腕」となってシステム開発をする最も身近なSIパートナーです。当社の特長は単なるシステム開発にとどまらず、ビジネスの成功に向けた包括的な支援を行う点にあります。アメリカでの実務的な情報収集や戦略的なIT活用をお求めの日系企業の担当者様や経営者様はぜひ『Stateside BizTech』のメルマガを登録ください。

 

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中島 恒久
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COO
中島 恒久
2004年に永住権に当選しアメリカへ移住。日本時代のインターネットプロバイダーでのサポート業務経験を活かしシステム開発会社を起業。その後、表情心理学系スタートアップの立ち上げへ参加。食品卸企業にてオペレーション部門、倉庫・物流部門の責任者を務めた後、2015年にFUJISOFT America 設立に参加。2017年より現職COO。MBA、ITIL4 Foundation、ECBAを取得。法人営業、管理会計、ビジネスアナリシス、プロセス改善を得意領域としている。

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