2025.10.23
  • 経営とIT

ERPの進化と「ERPフロント」の必要性――在米日系企業が直面する現実と、その解決策

ERPの進化と「ERPフロント」の必要性――在米日系企業が直面する現実と、その解決策

 ERPとは?

皆さんもERPという単語はよく聞くことがあると思います。
では、そもそもERPとはいったい何なのでしょうか?

ERPはEnterprise Resource Planning(企業資源計画)の略であり、企業が保有する経営資源――ヒト・モノ・カネ・情報――を一元的に管理し、業務全体を最適化するためのシステムのことなんです[1]。

ERPEnterprise Resource Planning-1

会計、人事、販売、購買、生産、在庫管理など、以前であれば部門ごとに独立していたシステムをひとつのデータベースに統合し、リアルタイムで社内全体の状況を把握できるようにする、というのがERPの役割になります。

ERPがもたらす企業にもたらす最大の価値は、「全社の情報を一つにまとめることによる経営スピードの向上」だと考えられます。経営層はERPによって正確なデータに基づいた意思決定を行うことができるようになり、現場ではデータの重複入力や確認作業を減らして効率化を図ることができるからです。

ERPの代表的なメリット

  • 情報の一元管理による業務効率化
  • 部門間のデータ共有によるミス削減とスピード向上
  • 経営情報の可視化による意思決定の迅速化
  • コンプライアンス強化と内部統制の透明性向上

上記などがERPの代表的なメリットとして挙げられるかと思います[2]。

ERPの導入や運用にはコストと時間がかかる

しかしながら一方で、ERPの導入や運用にはコストと時間がかかるのも事実です。取り扱う領域が広く、関係する部署も多いため、要件定義にも時間が掛かります。また、システム導入後に設計が現場の実態に合っていないことが判明し、「使いづらい」「定着しない」といった問題も生じることも良くあるのが現実です。

それでもなお、ERPは現在では企業経営の中枢に確実に存在し、DX推進の基盤として不可欠なシステムであると言えるでしょう[3]。

これまでのERPと新しい潮流

長年、ERPといえば『SAP』『Oracle』『Microsoft Dynamics』などの大企業向け統合型ERPのことを指すことがほとんどでした。

これらのシステムは各国の会計基準や内部統制に対応し、多国籍企業の複雑な業務プロセスを支える高機能なシステムとして発展してきたという歴史があります。

しかし、その分だけ導入コストや運用負荷も大きく、中堅・中小企業が導入するにはハードルが高いという課題もありました[4]。

近年注目されるモジュール型ERP(スモールスタートが可能な新世代ERP)

An image illustrating a modular ERP system a new generation of ERP that allows for a smallscale start which has been attracting attention in recent ye

そこで近年注目されているのが、ZOHO (ゾーホー)やOdoo(オドゥー)に代表されるモジュール型ERPです。「スモールスタートが可能な新世代ERP」と言っても良いと思います。

ZOHO(ゾーホー)

ZOHOは、CRM、会計、人事、購買、在庫、プロジェクト管理など50以上の業務アプリを統合したクラウド型業務スイートです[5]。

直感的なUIと豊富な機能を兼ね備え、「必要な機能だけを使う」「後から拡張する」といった柔軟な導入が可能になっています。大規模ERPのように導入までの長期プロジェクトが不要で、中小企業でも手の届く価格で導入でき、一元管理を実現できるのが特徴です。

Odoo(オドゥー)

Odooは、世界で800万人以上のユーザーを持つオープンソースERPです。[6]。

販売、会計、製造、在庫、人事など、業務領域ごとにモジュールを組み合わせて構築できるため、“自社業務に合わせた必要十分なERP” を柔軟に作ることが可能です。拡張性の高さとコスト効率の良さから、スタートアップから中堅企業まで幅広く採用が進んでいる新生代ERPです。

このような新しい潮流のERPは、「業務を縛る仕組み」から「業務を支える仕組み」へと進化しており、導入スピード・柔軟性・ユーザー体験の向上を重視していると言えます[7]。

なぜ「ERPフロント」が必要なのか?

前述した通り、ERPは本来、業務を標準化し、全社統制を強化するためのシステムです。そのため、設計思想として「精密で厳格」であることが求められます。

しかし、この特性が、現場ユーザーの “使いづらさ” につながるという側面があります。

Upset businessman sitting at the table with crumpled paper in office

大規模ERPの使いづらさ

  • 画面構成が複雑で、操作に習熟が必要
  • 入力項目が多く、ミスや入力漏れが発生しやすい
  • 業務ごとに画面を切り替える必要があり、処理時間がかかる
  • 設定変更や修正に専門知識が必要

大規模ERPでは上記のような課題が頻発します[8]。

つまり、ERPは「正確である」ことに最適化されている反面、「使いやすい」ようには設計されていないと言えます。その結果、ユーザーの操作に時間が掛かったり、ミスが頻発したりして、経営層が最も重要視する「正確なデータがリアルタイムに反映する」ということが実現できないという悩みをよくお聞きします。

このギャップを埋めるための一つの有効な選択肢が「ERPフロント」です。

ERPフロントとは「既存のERPの上に “ユーザーに最適化された操作レイヤー” を設け、業務に合わせた画面・入力・ワークフローを提供する」というものです。

ERP本体のガバナンスを変えることなく、フロント側で入力補助やチェック機能を実装し、ユーザー体験とデータ品質を両立させることができるのが特徴です[9]。

ERP導入企業の約70%が「操作性の改善」を最優先課題に挙げており、ERPフロントの導入は“システム改修に頼らない効率化手段”として広がっています[10]。

在米日系企業におけるERPフロント導入の意義

ERPフロントによる「操作性の改善」というアプローチは、(私たちのお客様のほとんどを占める)在米日系企業の皆様に非常に有効なのでは?と考えています。多くの現地法人は、本社に比べてIT投資が後回しになりがちで、10年以上前に導入したERPをそのまま使い続けているケースも少なくありません。

file

また、M&Aで現地企業を買収した場合、買収先のERPが老朽化しており、本社システムと統合できないという問題も多いかと思います。(実際に私たちのお客様からも同様のご相談を頂きました)[12]

ERPのバージョンが古いと、米国会計基準(US-GAAP)や税制への対応が遅れてしまったり、セキュリティや監査要件を満たせないなど、業務リスクが生じてしまいます。

しかしながら、ERPを丸ごと刷新するには膨大な時間とコストが掛かってしまい、先送りや断念せざるを得ないという声も良くお聞きします。

こうした中で、ERPフロントを導入して段階的に改善する手法は現実的ではないでしょうか?
既存のERPを維持したまま、入力・承認・レポート部分を短期間で刷新することで、リアルタイムで経営データを参照して意思決定が出来るようになります。

ローコード開発プラットフォームの活用が合理的な選択

たとえば『intra-mart』のようなローコード開発プラットフォームを活用すれば、数週間〜数か月で “現場が使いやすい操作画面” を構築できてしまいます[13]。

ty-about-08

 画像引用(intra-martとは|株式会社NTTデータ イントラマート) 

ERPフロントの導入は在米日系企業にとって、極めて合理的な選択肢

  •  ERPを止めずに改善したい
  • 本社システムとの整合性を保ちたい
  • 限られた予算で生産性を上げたい

という在米日系企業にとって、極めて合理的な選択肢ではないでしょうか?[14]。

ERPを“変える”のではなく、“使いこなす”時代へ

ERPフロントは、ERPそのものを置き換えるというものではありません。むしろ、既存のERP資産を活かしながら “使いこなす” ためのアプローチと言えるでしょう。高機能なERPの良さをそのままに、現場の操作性・スピード・柔軟性を高めることで、企業全体の生産性を底上げできる可能性があります。

特に在米日系企業にとってERPフロント導入は「時間をかけずに結果を出す」現実的な選択肢の一つでしょう。限られた人員と予算で、古いシステムをどう活かすか?というのは多くの企業にとって共通のお悩みかと思います。

その答えの一つが、「ERPを変えるのではなく、ERPフロントによって使い方を変える」ことと言えるかと思います。

まとめとウェビナーのご案内

富士ソフトアメリカでは2025年11月10日午後4時(西海岸時間)から『intra-mart®で実現する「ERPフロント」活用セミナー』を開催いたします!

FUJISOFT_ONLINE_SEMINAR_1

本ウェビナーでは、ERPフロントの具体的な活用方法と、intra-martを用いた成功事例をご紹介します。「現場が使いたくなるシステム」と「経営が信頼できるデータ基盤」をどう両立させるか、そのヒントをお届けします!ぜひご参加ください!

intra-mart®で実現する「ERPフロント」活用セミナー

EVENT DATE

11/10 Mon. 4:00pm-5:00pm PST

PRESENTER

  • 1  intra-mart  紹介。日本国外の利用事例|株式会社NTTデータイントラマート・堀雅博氏
  • 2  ERPフロントシステムとは。intra-mart 活用事例|富士ソフト株式会社・阿部良平氏
  • モデレーターFUJISOFT AMERICA INC・中島恒久(Twitter / Linkedin )

お申し込みはこちら

 

参考文献(URL付き)

  1. SAP Japan「ERPとは?導入メリットなどを徹底解説」
  2. Oracle Japan「ERPとは何か」
  3. 経済産業省『DX推進ガイドライン』(2023)
  4. Gartner, Market Guide for Cloud ERP for Product-Centric Enterprises, 2023
  5. Zoho Corporation「Zoho One 製品概要」
  6. Odoo S.A.「Odoo - The #1 Open Source ERP」
  7. Capterra「ERP Software User Trends 2024」
  8. McKinsey & Company「The Next Generation ERP Landscape」(2022)
  9. NTTデータイントラマート「intra-mart × ERP連携事例」
  10. IDC Japan『国内ERP市場動向2024』
  11. JETRO『北米日系企業実態調査2023』
  12. 『日系企業の米国DX動向調査2024』
  13. IDC Japan『国内ローコード/ノーコード開発ツール市場予測2024–2028』
  14. PwC Japan『クロスボーダーM&A後のIT統合レポート2023』

 

Mail Magazine

メルマガ登録

中島 恒久
img02
COO
中島 恒久
日本時代には、インターネットプロバイダーでのサポート業務や、コールセンター向けFAQシステムの構築を担当。2004年に永住権を取得してアメリカへ移住し、システム開発会社の起業や、大学発の表情心理学系スタートアップの立ち上げに携わった。その後、食品卸企業にてオペレーション部門および倉庫・物流部門の責任者として業務改善と組織運営を率いる。2015年に FUJISOFT America の設立に参加し、2017年より現職。グロービス経営大学院にてMBAを取得し、ITIL4 Foundation・ECBAなどの資格も保有。法人営業、管理会計、ビジネスアナリシス、プロセス改善を得意とし、幅広い経験を活かして事業運営をリードしている。

メルマガ登録

Mail Magazine

アメリカ進出を支える富士ソフトアメリカのメルマガです。アメリカ現地でのシステム開発や運用のリアル、日系企業が直面する課題とその乗り越え方をお届けします。

当フォーム送信によって個人情報保護方針に賛同いただいたとみなします。
(メルマガはいつでも解除できます)

資料ダウンロード

Download

アメリカでのシステム導入の基本と、
現地での進め方のヒントをまとめました。

ご相談・お問い合わせ

Contact

「ビジネス目標から始めるシステム改善」に
お悩みの企業様はぜひ富士ソフトアメリカにご相談ください。