2025.10.08
  • ITと管理会計

インタビュー: 公認会計士 / 経営大学院教授 ・溝口聖規氏

インタビュー: 公認会計士 / 経営大学院教授 ・溝口聖規氏

インタビューゲスト 溝口聖規氏

溝口聖規氏(公認会計士、グロービス経営大学院専任教授)

att.SxSH3whag2JzIPIpMu0gFHMdEV-PGBnsQks7RhHU9J8大学卒業後、公認会計士試験2次試験に合格し、青山監査法人(当時)入所。主として監査部門において公開企業の法定監査をはじめ、株式公開(IPO)支援業務、業務基幹システム導入コンサルティング業務、内部統制構築支援業務(国内/外)等のコンサルティング業務に従事。みすず監査法人(中央青山監査法人(当時))、有限責任監査法人トーマツを経て、溝口公認会計士事務所を開設。現在は、管理会計(月次決算体制、原価計算制度等)、株式公開、内部統制、企業評価等に関するコンサルティング業務に従事している。上場企業の社外取締役も務める。(プロフィール引用

 

インタビュアー 富士ソフトアメリカ COO 中島恒久

nakajima2004年に永住権に当選しアメリカへ移住。日本時代のインターネットプロバイダーでのサポート業務経験を活かしシステム開発会社を起業。その後、表情心理学系スタートアップの立ち上げへ参加。食品卸企業にてオペレーション部門、倉庫・物流部門の責任者を務めた後、2015年にFUJISOFT AMERICA設立に参加。2017年より現職COO。MBA、ITIL4 Foundation、ECBAを取得。法人営業、管理会計、ビジネスアナリシス、プロセス改善を得意領域としている。

はじめに

中島 今日は初めてのインタビュー、対談企画です。
溝口先生とは US FrontLineさんで ITと管理会計」をテーマにコラムも書かせていただいていますが、今回は改めてなぜ私たちが「ITと管理会計」をテーマに発信し始めたのか、どう考えているのかをお話しできればと思います。よろしくお願いします。

溝口 こちらこそ、よろしくお願いします。

管理会計に惹かれたきっかけ

中島 先生はグロービスでも「管理会計といえば溝口先生」というイメージがあります。管理会計に注目したきっかけ、いつ頃どのタイミングで「面白い」と感じられたのでしょうか?

溝口 私はもともと会計士なので、会計の出発点は財務会計、つまり会社の決算書の会計監査でした。(会社が)外部に公表される財務データに関する仕事ですね。(監査法人に)入所して56年経った頃にコンサル会社へ出向し、クライアントに ERPを導入する仕事を2年ほど担当しました。
その際、月次決算の仕組みの構築などを進める上で「経営にどんな情報を提供すべきか」を企業と相談しながら、現状どおりで良いのかを検討し、業務フローを含めて最適なやり方を設計しました。目的に対してどの手段が最適かを考え、現場の方々と議論しながら作っていくプロセスに創造性を感じ、「面白い」と思ったのが最初です。

IT と会計は切り離せない?

中島 やはりシステム(IT)と会計は切り離せないものだと感じますよね。

溝口 そうですね。システムありきではありませんが、会社規模が大きくなりデータ量やスピードの要求が高まると、人力だけでは難しい。経営にできるだけ早く情報を届けるために、IT を手段として活用すべきだと思います。

中島 私たちはシステム会社なので、経営者の方から「今のシステムが良くない」「情報がうまくまとまらない」「決算に時間がかかるので改善したい。良いシステムはないか」という相談をよくいただきます。ただ、システムを入れ替えればすべて改善するわけではありません。お客さまが何を欲しているのか、どんな情報が必要か、業務フローは適切かを確認・分析し、ときには業務改善を提案したうえでシステムを入れる形になります。システムで処理したトランザクションの最終的な結果は財務諸表に現れますが、システム会社はエンジニアが中心なので会計に詳しい人は多くない印象です。

溝口 そうですね。会計に明るい方(会計士など)が実装チームに入ることもありますが、絶対数は多くない。一方で、会計士側も IT やシステムに強い人は相対的に多くはない印象です。多くはシステムから出てきた財務諸表や集約データを受け取ってレビューするところで止まり、システムそのものへの改善提案まで踏み込む場面は少なめです。もっとも、会計監査でも会計情報はシステムに依して生されるものが多いため、ステム監査は必要です。その場(法人の)チームにして、テストプロセスと結果を会計監査チームと共有します。

データ移行と監査対アル

中島 システム入れ替え時、システムからシステムへのデータ移行がうまくいかないことはよくあります。四半期など会計的にキリの良いタイミングで移行することが多いのですが、すべてのデータの移行の結果、高がわなくなってしまうこともあります。監査人から「なぜこのシステムではこの数になるのか」とわせがこともあり、その時に適切な明ができないとりますね。

溝口 その点では、基幹系・会計システムにわる人は仕組みを理しておく必要がありますし、会計側もまったく分からないでは全体機能しませんね。専門性の分業は必要ですが、低限共通がないと難しいですね。

ダッシュードと「分析」の誤解

中島 はクラド会計アプリケーションのダッシュードやレート機能に関心をたれる経営者の方が多いですが、正直なところ標準ートは用的です。会社によってなければいけない指標なることもあるのでスタムが必要です。とはいえ何を重視してるべきかの分析がなければ設計できないんですよね

溝口 そのりです。「分析」という言葉はよく使われますが、何をやれば分析なのか定義曖昧なことが多い印象です同期比増減クト(実の報にすぎずそれを分析とするのはうと思いますなぜそうなったのかまで踏み込む必要があります。

中島 現場では「計画対」「年対」「セグメント」くらいで、コメントは「注したので計画未達来季頑張ります」で終わりがちです。

溝口 を少しえていても、改善(次のち手)につながらないなら“分析のための分析”になってしまう。

中島 コラムでは、価格×数量のようなシンプルな分を提したことがありました。えば「数量100個増やす」のと「単価を数ドル上る」のとで力と実現可能比較する。ここまで情報をえてトプに届けていれば、思決しますね。

溝口 管理会計は難な理論というより、どこにインクトがあるかを分して当たりける 作法 がま大切です。下記の流れで落としていくのが良いと思います。

  • 必要な情報
     ↓
  • データの所
     ↓
  • ート設計へとバッキャスト

中島 感です。システム先で入ると目的との整合が取れ機能使われないままになることもあります。言葉だけがきして“データドリブDX”っても、実際にやるべきことはもっとシンプルな分と設計だったりします。

導入より「用」が難しい

中島 一度プロジェクトが走り始めると導入を目的化してしまうケースもあります。定期的当に必要なことをやれているかをチェックして少しせば良くなるのですが、導入積極的にえようとするのは難しいのが実情ですよね。

溝口 導入まではチームを組み、リソースも確しますが、用になると現場にちる入力は結人間です。しい登録しい入力がされていないと、から集計に使えません。設計どおりに使えば集計できるのに、自己流入力でデータが使えなくなることはよくあります。人が Excel 管理してシステムに入らない良データ”問題です。何のためにシステムを導入したのか、となってしまう。

中島 ールは(できるだけ)アルタイムに情報を管理して適切なアクションを取こと。そのためにシステムをしく使い、管理会計を含む知識を活用する。そうし趣旨でコラムを書かせてもらっているんですよね。

企業・会社こそチンス

溝口 は中企業から管理会計についての相談もえています。は「人・などの経営リソースが潤沢ではないため、IT で人の部分を価値が大きい上場企業に、管理会計の有効活用の余地分にあると思います。

中島 ただ、規模だと管理会計にまで手が回りにくい現実がありますよね。

溝口 意識がない会社もあれば、意識はあっても人手がりない会社も多い。ただ、データは社存在しています。IT はそれを管理・集約・加工共有して、プに目的適的な情報提供をするための手段。まデータの棚卸から始められます。システムがなくてもできることも多いですし、準備ができている会社はル導入もスムーに進みますね。

中島 さい組だからこそ、ここをちんとしておくと無駄。管理会計で注力すべきことを特定できれば、られたリソースを集中できますしね。コラムは基本的にアメリカでビジスをされている方向けに書いています。日で大企業でも、米国進出直後米国法人は規模なことが多い。そんな方々のントになればと考えています。

溝口 でも上場・上場や規模データドリブン経営広げたいと思っています。ただ日企業では「うちはそこまで 」となりがち。一方、...米国の日会社会社の結決算に入る、あるいは上場企業みの管理水準を求められることがあり、(データドリブン経営が)Nice to haveではなくMust have である企業も少なくないと思います。
だからこそ、
米国日経法人向けの発信に手えを感じていますコラムの舞台はサンフランシスコで、人公の「タジマくん」も頑張っていますよね

中島 短期間でいろいろやってますよね()。キャラクターは私の実体験数の人物像をミクスしています。コラムと連動して、今音声や対談でもう少し深掘ていけたらと思います。

対談のイントまとめ

IT と管理会計は切り離せない

企業規模が大きくなりデータ量やスピードがすと、人力だけでは処理できません。アルタイムで思決する情報を出すには、IT 活用が不可欠です

システム導入は目的ではなく手段

「システムをえれば決する」という誤解危険。経営が求める情報は何か業務フローはしいかを見極めることが先であり、システムはその実現の手段にません。

分析は事実報ではない

同期比や計画といった数羅列は分析ではなく、ただの結果報のは「なぜそうなったのか」「次に何をすべきか」まで踏み込むことです。

導入よりも用が難しい

システムはしく入力され、ルール用されなければ機能しません。Excel 管理や入力がると集計不能になり、導入の意味われます。

企業・会社こそ活用余地が大きい

リソースがられる分、IT で人の作業を替するメリットが大きい。に日子会社会社から上場企業みの管理を求められることも多く、「IT × 管理会計」が “必須” になるースが少なくありません

溝口先生の新刊

『新リース会計基準の道しるべ ―何が変わるのか?/財務数値へのインパクト/適用準備』著:溝口聖規 / 発行:税務研究会出版局 (2025/9/3)

book-mizoguchi2027年4月1日より強制適用される「新リース会計基準」のすべてを解説。本改訂は財務諸表の資産、負債、利益に広範な影響を与え、経営判断や業務フローも大きく変えます。経理部門だけでなく、営業など事業部門の担当者にもわかやすく理解いただけるよう、「リースとは何か」という基本から、新基準の具体的な変更点、財務数値へのインパクト、実務上の準備までを平易な表現で網羅。図表や設例を交え、新時代を生き抜くための道しるべとなる一冊です。

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中島恒久
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COO
中島 恒久
日本時代には、インターネットプロバイダーでのサポート業務や、コールセンター向けFAQシステムの構築を担当。2004年に永住権を取得してアメリカへ移住し、システム開発会社の起業や、大学発の表情心理学系スタートアップの立ち上げに携わった。その後、食品卸企業にてオペレーション部門および倉庫・物流部門の責任者として業務改善と組織運営を率いる。2015年に FUJISOFT America の設立に参加し、2017年より現職。グロービス経営大学院にてMBAを取得し、ITIL4 Foundation・ECBAなどの資格も保有。法人営業、管理会計、ビジネスアナリシス、プロセス改善を得意とし、幅広い経験を活かして事業運営をリードしている。

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